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台風ケッツァーナで被災した3児の母、プリンセス 〜フィリピン〜

(2009年11月2日更新)

その日、プリンセスは3人の子どもを連れて母親の家に避難しましたが、夫は家や家財を守るために一人で家に留まることにしました。その時点では、今回の洪水がこれほど大きな被害をもたらすとは思いもしなかったのです。

洪水は安全と思われた母親の家をも襲い、2階まで浸水してきました。彼女は、4歳の子どもと1歳の双子を連れて屋根の上に登り、さらに隣の家の屋根へと渡って逃げていかなくてはなりませんでした。雨でずぶ濡れになり震えながらも、子どもたちが洪水の激しい流れに巻き込まれないように必死で守りました。

台風で被災した地域
 

夕方になってようやく水が引き、親子ともども安堵しました。夫のことが少し気がかりではありましたが、彼は水泳が得意なため、あまり心配はしていませんでした。しかし、日が暮れても夫は迎えに来てくれず、プリンセスの心にいよいよ不安がよぎってきました。

翌朝になり、近所の葬儀所に彼の遺体が安置されているという知らせが届きました。葬儀所へ駆けつける間、何かの間違いであってほしいと一心に祈り続けました。しかし、祈りは届かず、彼女は夫の遺体と対面することになりました。

近所の人によると、プリンセスの夫ジェリーは屋根からマンゴーの木に飛び移って避難していましたが、激流がマンゴーの木を根こそぎ流してしまったと言います。それだけでなく、彼の遺体からは、胸を強打した跡や、ひどい傷を負っていたことも分かりました。

 「肺が弱い双子たちが使っていた噴霧器も、何もかも流されてしまいました。私には新しいものを買うお金すらありません」。すべてを失ったプリンセスと子どもたちは今、親戚の家で暮らしています。「親戚に余計な食費をかけるのは心苦しいのですが、避難所のテント生活で双子の健康が悪化する危険性を考えると、ここに留まるしかありません」と彼女は言います。

 
プリンセス

「パパ、パパ!」あの日以降、双子は父の帰りを待ちわびています。いつもそうしていたように、夕方になると大きなスリッパを持って玄関まで行き、父を呼びます。「子どもたちは出迎えた時に夫に抱き上げてもらうのが大好きで、よくなついていました。夫は双子に子守唄を歌い、ミルクもあげていました。もう二度と帰らない父親を待っている彼らの姿を見るのは、とても辛いです」。また、経済的にも、「一家の大黒柱を失った今、どう立ち向かって行ったらいいのか…」と途方に暮れています。

被災から1ヶ月経った今も、プリンセスは、夫が彼女のすぐ近くにいるように感じています。夜寝ていても、隣で自分たちを見ているのではないかと、すぐに目が覚めてしまうのです。「彼は夫として本当に素晴らしい人でした。私たちの身に起こったことは決して忘れられませんが、いつか乗り越えられると信じています」。プリンセスは強い眼差しで、再スタートを誓いました。

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